
『ルシファー』シーズン1を全話視聴したので、感想とストーリーのポイントをまとめます。
どんなドラマ?
地獄の王ルシファーが人間界にやってきて、ロサンゼルス市警の女性刑事とコンビを組んで犯罪捜査に当たる。そんな一見ぶっ飛んだ設定のクライム・ファンタジーです。
原作はDCコミックス/ヴァーティゴの『ザ・サンドマン』シリーズに登場するルシファー・モーニングスターで、ニール・ゲイマンが生み出したキャラクターをベースにしています。2016年にFoxで放送開始、シーズン3で一度打ち切られたものの、ファンの熱烈な署名活動によりNetflixが続編を制作。全6シーズン・93話で2021年に完結しました。
基本構成は「1話完結の事件捜査」。毎回新たな殺人事件が起きて、ルシファーとクロエが解決していくという刑事ドラマのフォーマットですが、そこにルシファーの父親(=神)へのコンプレックス、天使や悪魔の登場、クロエとの関係で人間的に成長していくルシファーの姿といった縦軸のストーリーが絡み合います。
『スーパーナチュラル』のようなオカルト要素、反抗期の子供のようなユーモア、切ないロマンス――1時間の中にさまざまな魅力が凝縮されていて、一度見始めたらハマること間違いなしの作品です。
あらすじ

地獄の王座を放棄し、ロサンゼルスで高級ナイトクラブ「ラックス」を経営しているルシファー・モーニングスター。イケメンでカリスマ性に溢れ、ワイン、美女、音楽に囲まれた優雅な地上生活を満喫していました。
ある日、「ラックス」の前で友人のポップスターが何者かに射殺される事件が発生。ルシファーは捜査に乗り出し、担当刑事クロエ・デッカーと出会います。
当初は素っ気ない態度のクロエでしたが、ルシファーの「人の秘密を暴く能力」と、罪を犯した者には必ず罰を与えたいという強い信念に興味を抱き始めます。一方のルシファーも、自分の能力がなぜかクロエにだけ通じないという不思議な現象に好奇心を刺激され、二人はコンビを組んで事件解決に挑むことになります。
キャスト

ルシファー・モーニングスター
ルシファー・モーニングスター(トム・エリス)。 正真正銘の「堕天使の王」にして地獄の元支配者。人間に対して質問するだけで、心の奥底に隠された欲望や秘密を暴露させる特殊能力を持つ。
不死身の肉体で銃弾も刃物も効かない(ただし、ある条件下では例外がある)。父なる神から地獄の管理を任されていたが、嫌気がさして人間界に逃亡。ナイトクラブ「ラックス」を経営しながら自由を謳歌している。セクシーでワイルド、そしてどこか子供っぽいユーモアが魅力。
クロエ・デッカー
クロエ・デッカー(ローレン・ジャーマン)。ロサンゼルス市警殺人課の女性刑事。娘トリクシーの母で、元夫ダンとは離婚済み。かつて女優として映画にも出演していた異色の経歴を持つ。正義感が強く優秀な刑事だが、ルシファーの能力がなぜか彼女にだけ効かないという謎を秘めている。
メイズ
メイズ(マジキーン)(レスリー=アン・ブラント) 。ルシファーとともに地獄を抜け出した悪魔。圧倒的な戦闘能力を持ち、ルシファーのボディーガード的存在。忍者のような動きで敵を制圧する。人間界に来てからクロエの影響で変わっていくルシファーに不満を募らせていく。
アメナディエル
アメナディエル(D・B・ウッドサイド)。ルシファーの兄にあたる天使で、「神の長子」。時間を減速させる能力を持つ。父なる神からルシファーを地獄に連れ戻すよう命じられており、あの手この手でルシファーの帰還を画策する。
ダン
ダン・エスピノーザ(ケヴィン・アレハンドロ)。クロエの元夫でトリクシーの父。ロサンゼルス市警の刑事。シーズン1では重要な事件に深く関わっている。
トリクシー
トリクシー・エスピノーザ(スカーレット・エステベス)。クロエとダンの娘。賢くて天真爛漫な少女。ルシファーは子供が苦手だが、トリクシーはルシファーが大好きで何かと絡んでくる。チョコレートケーキが大好物で、後にルシファーに直接お金をねだる場面も。
リンダ・マーティン博士
リンダ・マーティン博士(レイチェル・ハリス)。セラピスト。ルシファーのカウンセラーとして、彼の精神的な成長を支える重要な存在。シリーズ全体を通じて主要キャラクターたちの心の拠り所となっていく。
ネタバレ
以下はシーズン1の核心に触れる内容です。未視聴の方はご注意ください。
ルシファーの能力がクロエには何故か効かない

ルシファーの最大の武器は、人間の心の奥底にある欲望を引き出す能力。「本当に望んでいるものは何?」と問いかけるだけで、相手は抗えずに本音を暴露してしまいます。加えて不死身の肉体を持ち、銃弾も刃物もまるで効きません。
しかしクロエに出会ったことで、すべてが変わります。クロエにはこの能力がまったく通じないのです。
さらに衝撃的だったのは、自分が不死身であることを証明しようとクロエに銃で撃ってもらった場面。ルシファーの足から血が流れ出し、当の本人が一番驚きます。後にわかったのは、クロエの近くにいるときだけルシファーは傷つく存在になるということ。クロエがいなければ従来通り無敵のまま。
なぜクロエにだけこのような現象が起きるのか、シーズン1では明確な答えは出ません(この謎は後のシーズンで明かされます)。ルシファーはクロエがアメナディエルが送り込んだ刺客ではないかと疑い、天使の羽がないか背中を確認までしますが、何も見つかりません。この「クロエの謎」がシーズン1を貫く大きな縦軸のひとつになっています。
ルシファーとメイズとアメナディエルの三角関係

シーズン1の裏の物語を動かすのが、この三者の複雑な関係です。
メイズの離反
人間界に来てからクロエの影響で少しずつ「人間的」に変わっていくルシファーに、メイズは不満を爆発させます。かつてのように自分だけを頼り、地獄の王として振る舞ってほしいメイズは、ついにアメナディエルと手を組み、ルシファーを地獄に送り返す計画に協力してしまいます。
アメナディエルの暗躍
一方アメナディエルは、ルシファーのカウンセラーであるリンダに近づくため医師に扮してコンタクトを取ります(メイズの助言によるもの)。最終的にはリンダに正体がバレてしまいますが、この過程でアメナディエル自身も人間界の人間関係に巻き込まれていきます。
裏切りの連鎖
メイズの裏切りがルシファーにバレて激怒。拒絶されたメイズはリンダに相談し「友達を作りなさい」とアドバイスを受けますが、なぜかアメナディエルと関係を持つという行動に出ます。
これを知ったルシファーは、逆にメイズにアメナディエルの動向を探らせ、最終的には「地獄のダガー」でアメナディエルを始末するよう指示。しかしメイズがダガーを向けた瞬間、アメナディエルはルシファーの差し金だと見抜きます。
二人が言い争う中、メイズが「あなたたち二人とも、私を利用したでしょ!」と叫び、兄弟は二人そろって沈黙。コミカルでありながら、三者それぞれの孤独が垣間見える名場面です。
その後、アメナディエルが地獄のダガーで刺される事件が発生。メイズがルシファーの翼(切り落としたものを保管していた)を使って治療し、二人の間に新たな感情が芽生え始めます。
シーズン1のクライマックス
マルコム・グレアムの暗躍
シーズン終盤、アメナディエルはルシファーを地獄に戻すため、死んだ刑事マルコム・グレアムを蘇らせてルシファーを殺させようとします。クロエの近くではルシファーは不死身でなくなるため、殺せば魂が地獄に戻ると考えたのです。
しかしクロエがいない場所でルシファーに銃を向けたマルコムは、不死身のルシファーに歯が立ちません。逮捕されそうになったマルコムは、ルシファーの自宅に牧師の死体を置いてルシファーを殺人犯に仕立て上げるという卑劣な手に出ます。
ルシファーの絶望
警察に踏み込まれ、逮捕されるルシファー。信頼していたクロエに裏切られたと感じた彼は、自暴自棄になって警官に「撃ってくれ」と懇願します。
そこにアメナディエルが現れ、ルシファーを連れ出します。ルシファーを地獄に帰そうとしていたはずのアメナディエルですが、マルコムという「怪物」を蘇らせてしまった責任を感じ、今度は兄弟で協力してマルコムを追うことに。
トリクシーの誘拐
一方、クロエも独自の捜査でマルコムの正体にたどり着きます。しかしマルコムはトリクシーを誘拐し、証拠保管室の大金と引き換えにするよう要求。クロエは金を渡してトリクシーを取り戻しますが、マルコムはクロエをも殺そうとします。
一度目の死と帰還
駆けつけたルシファーがクロエを庇い、マルコムの銃弾を受けて倒れます。ルシファーの魂は一時的に地獄へ。そこで彼は、地獄に幽閉されていたはずの「ある存在」が脱走していることに気づきます。その存在を連れ戻すことが父(神)の意思だと感じたルシファーは、地獄から生還を果たします。
現世に戻ったルシファーがマルコムを追い詰め、最後はクロエがマルコムを射殺して事件は決着。マルコムは「ルシファーから貰ったコイン(地獄からの帰還を可能にするアイテム)があるから、また蘇れる」と言い残しますが、ルシファーは冷たくこう告げます。「あれは一回限りだ」。
シーズン1のラスト
事件が収束した後、ルシファーはアメナディエルに地獄で見たことを打ち明けます。
地獄に幽閉されていたはずの、ある存在が逃げ出している。その事実にルシファーは珍しく恐怖を見せます。アメナディエルが「お前が恐れるその人物は一体誰だ」と尋ねると、ルシファーはこう答えます。
「母だ」
ルシファーとアメナディエルの母。すなわち「女神」とは何者なのか? その答えはシーズン2へ。
まとめ
『ルシファー』シーズン1は、刑事ドラマ×超自然ファンタジー×ロマンティックコメディという異色の組み合わせを見事に成立させた作品です。
最大の魅力は、トム・エリスが演じるルシファーのキャラクター。地獄の王という壮大な設定でありながら、父親に反抗する思春期の子供のようなユーモア、クロエの前でだけ見せる弱さ、罪を憎み人間に興味を持つ純粋さ。そのギャップに視聴者は自然と引き込まれます。
1話完結の事件捜査を楽しみながら、「クロエにだけ能力が効かない謎」「ルシファーは地獄に帰るのか」という縦軸の物語が気になって次の話が止まらなくなる、中毒性の高いシーズンです。

